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一般公開

#コーディネーターの立場から

第5回 コーディネーターからみた信託の現場 ~どの専門家と組むか?~

一般公開期間:2024年7月1日 ~ 9月30日

※当記事は2024年7月の内容です。

協業して下さる士業の先生を見つけるまでが一苦労

 私が家族信託コーディネーターとして活動をスタートした当初は、一緒に組んで顧客対応を行って下さる士業の先生は周りに誰もおりませんでした。
 「さて、これからどの専門家と一緒に仕事を進めていけば良いのやら?」と、最初の一歩が踏み出せずに途方に暮れていたことを思い出します。
 意を決して、自分から士業事務所にアプローチに行き、断られたこともありました。
 「責任の所在が曖昧になるので、コーディネーターと組むのはリスクがあります。うちの面談室を使いたい時は使ってもらって構いませんけど」と言われたものです。また別の事務所に仕事始めのご挨拶に行った際には、「あぁコーディネーターですか。まぁ頑張って下さい。」と軽くあしらわれたこともありました。

 ようやく一緒に組んで下さる先生が見つかり、私のコーディネーターデビューとなった訳ですが、右も左もわからない私をリードしながら丁寧にタッグを組んで下さった先生には今でも本当に感謝をしています。
 その後私の生活の拠点が関東から九州へ変わったタイミングで、新しい場所でまた専門家の先生捜しから始めなければなりませんでした。
 しかし、それまで組成実績が多く積み上がっていたこともあり、初対面の士業にご挨拶に行っても割と快く「一緒にやってみましょう」とお返事をもらえるようになりました。
 家族信託普及協会の会員の先生の場合は、考え方というかDNAというか、方向性が同じ先生方が多く、安心して一緒にお仕事ができる感がとてもあります。

お客様に合わせて専門家を選ぶ

 現在拠点は九州に置いていますが、オンラインでのご相談等も多くあり、お客様のお住まいも必ずしも九州というわけではなく、全国各地からご相談をいただきます。そのため、一緒に組んでいただく先生方もだんだん広域に拡がり増えていきました。
 中には一度ご一緒したきりの先生もいらっしゃれば、何度も組んでいただく先生もいらっしゃいます。もちろん、どの先生にお願いするかは「私の好き嫌い」もありますが、やはり基準は「お客様のご希望に合うか」という視点で選んでいます。

 お客様の中には「女性の先生がいいです」と言う方もいれば、「年配の先生は避けてください」というお客様もいらっしゃいます。「遅い時間にオンライン対応してくれる先生を希望します」という一方で、「家に来て下さる先生にして下さい」というリクエストもあります。
 資産が潤沢なお客様でしたら専門家報酬はそこまで神経を尖らせませんが、費用をあまりかけられないお客様の場合には報酬基準がどうかという視点も大切です。

 家族信託組成に係る専門家報酬は、ある程度の「幅」内での差であることが多いのですが、中には、びっくりするような見積もりを出してこられる先生も実際いらっしゃいます。報酬の設定は自由なのですから、私の立場では何も申し上げませんけれど、そうした先生それぞれの費用感も把握した上でお客様にお繋ぎすることも私たちコーディネーターの大きな役目だと思っています。
 ちなみに、同じような信託の内容であるにも関わらず、先生によっては2倍以上も見積額が違うことがあります。
 ここだけの話ですが、高い見積りを出される先生が、必ずしも品質や顧客対応面で「良い」とは言えず、お客様からの満足度もあまり高くないことが多いのは不思議です。

コーディネーターと専門家も「やはり相性」

 こればかりは一度お仕事をご一緒に組んでみなければわからないのですが、先生方と仕事を進める中での「連絡の取り合い方」・「スピード感」・「お客様への対応」・「関係各所との連携」・「家族信託の知識や取り組み姿勢」など、どれをとってもそれぞれ違いますし、もちろんその際の案件の内容によっても異なります。
 「この人は良いかも」と思って紹介はしたが、途中から「違ったかな?」と感じるケースもやはりあります。

 ある案件で、「一度一緒にやってみましょう」とご一緒した司法書士の先生なのですが、お仕事はとても丁寧で良い方なのですが、まぁ時間がかかる・・。
 何でもご自分の尊敬している有名な弁護士の先生に作成した契約書文案のリーガルチェックを受けられるとかで、待つこと2ヶ月。
 私から見ると紛争性のない(将来にわたっても紛争性のほとんど想定されない)ご家族で、とてもシンプルな組成の内容でしたので、トントン拍子に手続きが進むと思っていたのですが、チェックを受けた先生との間で、「え?そこ?」というとても細かな部分の法律的見解についてずっとラリーが続いていたようです。
 それはそれで専門士業としては誠実なのかもしれないと思いながらも、お客様も「随分時間がかかるんですねぇ」と心配されていました。
 いつ迄たっても返答が無いので、「信託普及協会のリーガルチェックに出しましょうか?」とご提案したものの、「〇〇弁護士のチェックが絶対ですから」と言って引かれません。リーガルチェックに2ヶ月もかかるようだと、認知症に移行しそうで急いでいるお客様にはこの先生はちょっと難しいかもしれませんね。

 また、この先生との間でこんなことがありました。 
 「金銭の追加信託」に関する説明の段で、お客様から「振込でも追加は出来るのですか?」と尋ねられたことに対し、「信託口口座への振込だけでは追加信託は成立しません。そんないい加減なことではなく、都度追加信託契約書を交わし、その際にはこちらにご連絡ください。」という言い方をされるのです。
 決して間違ったことを仰っているのではなく、むしろ正しい手続きだとは思いますけれど、どうもしっくりこないというか阿吽の呼吸でお客様のフォローができないという違和感を持ちました。

 こうした違和感は、私だけではなく、きっとこの司法書士も私に対して同じことを感じたかもしれません。「このコーディネーターとはやりにくいなぁ」と。
 これら様々な経験から、コーディネーターと専門士業との間にも「やはり相性」はあるものだと痛感しました。(ちなみに家族信託普及協会の先生方にはあまり感じたことのない違和感です。)

「信頼できる先生」を更に増やしたい 

 これまで色々な先生方と家族信託の組成に関わらせていただいてきた中で、今は最強で最高の「信頼できる先生」と出会うことができました。その先生とは、現在7件の家族信託案件が進行中です。
 もちろん他の先生と組んでいる別の案件もありますが、この先生との仕事は、とても心地いい温度間で進められています。

 先に挙げました、「連絡の取り合い方」・「スピード感」・「お客様への対応」・「関係各所との連携」・「家族信託の知識や取り組み姿勢」は完璧です。こんないい関係性を、更に他の先生方ともたくさん築いていけるように、コーディネーターである私が努力をして行かなければと思います。 

 ご相談者から「あの人に相談したい」と選んでいただけるような信頼感のあるコーディネーターを目指していきたいですし、ご一緒させていただく先生方からも「次もあのコーディネーターと一緒に仕事がしたい」と思っていただけるよう、努力して参りたいと思います。