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一般公開

#コーディネーターの立場から

第4回 コーディネーターからみた信託の現場 ~コーディネーターのわくわくとモヤモヤ~

一般公開期間:2024年4月1日 ~ 6月30日

※当記事は2024年4月の内容です。

保険の方とのわくわく

 相続案件の集客はなかなか難しいことですが、そういったお客様を身近に多く抱えているのが、保険のお仕事をされていらっしゃる方々でしょうか。
 ご自分のお客様だけでなく、そのご家族みなさんの人生の節目にきっちりと寄り添ってライフプランを考えて差し上げるお仕事はとても尊いと尊敬しています。
 またそのお客様も、担当の保険の方をとても信頼し、家庭内で抱える「あまり他人には言わない問題」などもご相談されている姿は本当にうらやましく感じます。
 保険の方々のハートといいますかホスピタリティは、コーディネーターからするとどこか同じ匂いを感じる部分があり、とても相性がいい気がしてなりません。

 実際のところ、私が受任させていただく最近の相続コンサルティング・家族信託組成に関しては、保険の方からのご紹介がかなり大きな比重を占め、それはそれは足を向けて寝られない状況です。
 保険会社のお客様向けにセミナー講師で呼んでいただき、情報提供で終わらずに必ずやその日に個別面談を取り付けるのがスタイルになっていますが、「家族信託コーディネーター」に対して少し不審な思いで相談に来られる一般のご相談者と、信頼できる保険の担当者様が間に入って下さるご相談の方とでは、やはり随分と安心感が違うようで受任の角度は高い為、保険の方々にはとても感謝です。

 そして逆に私がやるべきことは、お客様を連れてきて下さった保険の方への「恩返し」。
 ここは、もちろん無理矢理保険のご提案をするような強引なものでは無く、相続税の配慮という面はもちろんのこと、「受取人固有の財産」「換金性」「遺産分割協議の対象外」、そして何より法律上の話だけで対策を進めるのではなく、ご家族が思い描く「あたたかい相続」の実現の為にストーリーを一緒に考えて差し上げる上では、「保険」というものがどれだけ相続対策にフィットするのかを理解して伝えて差し上げるのもコーディネーターの役割だと考えています。

 ただ、残念なことに私は保険のことは商品の内容等ほとんどわからないので、もしご相談者が
「保険の話をあらためて聞きたい」「お付き合いで入っている保険をこの機会に見直したい」
ということであれば、ご紹介者にきちんとお繋ぎ返すという関係性を大切にしています。
 全てこのようにうまくいく訳ではありませんが、少なくとも「相続の手続きの専門家ではなく、『気軽に』(ここ大事)相談できる専門家を繋いだことでお客様がとても喜ばれました!」と保険の方に言っていただけると、例え私が家族信託や相続コンサルを受任できなかったとしても、「あぁ良かったなぁ」と保険セールスの方にとっての付加価値という点で恩返しできた気分でささやかに自己満足しているところです。
 またその先にラッキーが重なり、保険の方から、「相続対策の中で大きな保険契約をお預かりできました」と言っていただけると、更に嬉しくなるのはコーディネーターの皆さん同じ状況ではないでしょうか? 士業の方々とはちょっと違うアプローチができるのはコーディネーターならではかもしれません。
 これからももっともっとたくさんの保険の方々とよい関係性を築いて、認知症対策の不安や相続のお困りごとを抱える方々のお役に立つお仕事をしていきたいと思っています。

保険の方とのモヤモヤ

 そんなよき協業仲間の保険セールスの方々ですが、たまに予想外の展開に転ぶこともあります。先日もぶち切れられたケースを恥ずかしながらご紹介させていただきましょう。
 富裕層の方の相続対策で保険Aさんから声がかかりました。お客様にじっくりとお話を聞かせていただき、ご自身の認知症対策や遺言対策はもちろんのこと、その方のご兄弟や奥様のご親族のことまで深掘りをしたところ、これまで見えなかったたくさんの問題が顕在化し、今 対策を打たなかった場合の未来図をご説明させていただいたところ、「あなたにお願いしたい」と家族信託含め相続対策のフルコンサルでの受任となりました。

ご紹介下さった保険セールスAさんからも
「お客様が、『これまで相談した専門家や、群がってきていた金融機関の人たちはうちのお金のことしか聞いてこなかったが、今回のコーディネーターさんが初めてお金の話よりも家族または親戚全体の心配をしてくれたたった一人の人だった。良い方を紹介してくれて本当にありがとう』ととても感謝されました。」
と言っていただき、そこに付加価値を見出して下さったということで、大きな保険をお預かりすることができたそうです。
 Win-Win の関係が築けて良かったと安心していたものの、その後家族信託組成中にAさんからお怒りの電話がかかってきました。

「家族信託をやっている途中で、お客様が他の保険会社でも大きな保険に加入したと聞きましたが、一体どういうつもりですか!! こちらに事情説明と謝罪に来て下さい!」
ということなのです。それはもう驚くほどの勢いで。

 そのお客様は、もともと数社の保険会社とお付き合いがあって、色んな保険に加入していた方なのですが、財産を丸裸にして相続対策をしている以上、他社の保険契約に流れそうな動きをなぜ紹介した自分に知らせなかったのかということらしいのです。
 いくらご紹介者とはいえ、こちらにも守秘義務がありますから、家族信託組成と相続対策全般のコンサルが始まった以上は、例えご紹介者とはいえ情報共有していいこととそうで無いことの区別はつけるべきですし、何より他社の保険への加入はお客様がご自身で判断されたこと、加えてAさんには言わないでとお客様から口止めされていた以上、コーディネーターの私が紹介者に謝罪をする理由がどこにあるのか?

「全社にこの件を報告し、今後コーディネーターを入れないようにします!」と叱責されたので、
「はい どうぞ!」とお答えした次第です。

 これまで保険の方との連携で、たくさんの好循環をしてきましたが、私たちコーディネーターはお客様の家族信託のお手伝い・相続対策全般のサポートをする立場であって、紹介者である保険担当者への契約獲得アシストが一番の目的ではないということを、胸を張って再認識したクレーム案件となりました。

相続現場でのコーディネーターの「わくわくとモヤモヤ」。
共有していただけるコーディネーター仲間がいることが、何より心強いです。