一般社団法人家族信託普及協会では、家族信託をはじめとする、お客様の資産管理、資産承継に相談業務に携わる専門家の皆様への情報提供として、
・各省庁や団体から発表された統計資料の更新情報
・会員向けアンケート結果
をまとめた『FACT BOOK』を毎年製作し、発表しています。
家族信託に関しては、まだまだ専門家としても様々な試行錯誤が必要な時期であるとの認識から、出来るだけリアルなデータをそのまま提供することを心掛けました。
家族信託実務ガイドWEB版にて、ファクトブックで取り上げたデータの一部を5つほどご紹介します。
※『FACT BOOK2022』全体は、一般社団法人家族信託普及協会の会員ページからPDF版をダウンロードし、加工するなどご自由にお使いください。
Ⅰ:相談件数・組成件数の推移
家族信託の相談・受任件数は、2017年対比「11倍」に
今年の調査(2023年1月~2月実施)では、2017年対比で、相談件数・組成件数ともに、11倍を超える結果となっています。
コロナ渦中であった昨年(2021年)も2020年対比で120~130%の伸びで推移しており、コロナ禍も収束の気配となった2022年は、2021年対比で130%の伸びとなっています。
コロナ禍の間、面談もままならなかった状況になり、信託組成の希望はあっても前に進めなかったお客様が一気に2022年に相談・組成に進んだものと思われます。


Ⅱ:相談ルートについて
家族信託の相談をどのチャネルから得ているかという質問については、昨年までとは違い、「取引先からの紹介」が単独一位に躍り出ました。
昨年までも「取引先からの紹介」は多かったのですが、同時に「セミナー等の参加者」も同率一位でした。
「取引先からの紹介」チャネルの構築は、時間を掛けての啓蒙活動が必要となります。
しかしひとたび機能し始めると、コンスタントに紹介(対応依頼)が来るチャネルでもあります。
・積極的なセミナー開催等の情報発信
・他業種との連携によるチャネルの構築
は、こうした相談案件の発掘の両輪と言えるでしょう。

Ⅲ:家族会議の開催
私ども家族信託普及協会が特に強調しているのが「家族会議」です。
最終的にどのような対策案を選択するにせよ、「生前の資産管理」「資産の承継」といったテーマにおいて、家族全員が共通の認識を持ち、取るべき対策に合意することが最も大切だと考えます。。
従来からある様々な対策(例えば遺言書など)であっても、親世代の考えを子世代に事前に伝えていさえすれば起こらなかった不要な「争いごと」「不信感」を未然に防止することができます。
日頃から仲良くコミュニケーションが良いご家族であっても、「親世代が認知症等になった際の財産管理」や「親世代の死亡後の資産承継」といった問題はなかなか口に出すことが難しい問題です。
家族信託の検討を通じて、家族会議の開催を専門家が提案し、その機会を持つことが、家族同士で色々な事を話し合えるきっかけになります。

Ⅳ:信託提案上の阻害要因
今年のアンケート結果でも、やはり「親世代の理解・納得」がトップでした。
これは子世代が主導で先に相談があり、次に親世代に話を持っていった際に彼ら(彼女ら)の理解や同意が得られなかったケースが多いと推測されます。
次に多かったのは「親世代の意思判断能力」です。
これも子世代が心配し相談したものの、その時点で既に親世代の意思判断能力が契約行為に耐えられない状況であったということですので、子世代からすれば「もっと早く進めておけば」と悔やまれるケースでしょう。
子世代にとっては、親世代が認知症等になった後の介護看護は自分自身に降りかかってくる課題ですので、常にアンテナは高く出来る手段は打っておきたいという気持ちが強くあるものです。
しかし親世代がまだまだお元気な間は、親世代がその必要性をお認めにならないケースが多くあることに加え、親世代が本当に認知症等の状況になってしまったならばもはや何も対策が出来なくなります。
子世代にとっては、適切な対策を親世代と相談するタイミングが難しいものですので、やはりこうした対策は親世代自身が自分事として考えるべきことなのだろうと思います。

Ⅴ:組成した信託の内容
家族信託の組成内容ですが、やはり圧倒的に「認知症対策(不動産含む)(38%)」が多くなっていますが、これまでの調査では、その割合は次第に小さくなってきているようです。
例えば昨年のアンケートでは、「認知症対策(不動産含む)」の割合は、41.5%でした。
その他の主だったものを昨年と比較すると、
・認知症対策(現金のみ):昨年18.5%⇒今年13%
・資産の承継 :昨年16.9%⇒今年16%
・親なき後対策 :昨年 9.2% ⇒今年11%
・事業承継対策 :昨年 2.1% ⇒今年 9%
といった変化があります。
もちろん、これらは割合の変化であって、絶対数が拡大しておりますので、相談そのものはいずれも増加していることに変わりはありません。

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