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一般公開

#「親なきあと」問題を考えよう

第2回 「親なきあと」問題へのアプローチ

一般公開期間:2023年10月1日 ~ 12月31日

※当記事は2023年10月の内容です。

「親なきあと」本人を支える制度は何か

 前回のコラムで、「親なきあと」の課題は 3 つとお伝えしました。お金、住まい、日常生活の支援です。それぞれの課題については、その解決手段としていくつかの制度や仕組みがあります。
 お金はたくさん残せば良いとは限りません。本人が相続などで大金を手にしても、短期間に使ってしまうリスクがあるので、定期的に収入を得る仕組みが重要です。もちろん家族信託の活用は有力な手段ですし、生命保険信託や遺言代用信託、特定贈与信託といった信託関連の商品もあります。信託以外では、障害者の保護者を対象にした障害者扶養共済という制度も助けになります。そしてそのお金を管理するためには成年後見制度や、日常生活自立支援事業という後見制度の簡易版のような仕組みがあります。
 住まいに関しては、「親なきあと」に支援を受けながら生活する場所として入所施設やグループホームがあり、グループホームは数や種類が増えてきています。こういった住まいに移る前の練習として、短期入所や宿泊型自立訓練といった制度も利用できます。また、日常生活の支援については、一人暮らしを支援する仕組みが増えてきています。

「親なきあと」相談室の役割

 障害者の親が将来について具体的な相談をしたいと考えた場合、相談内容によって行き先は変わってきます。たとえば子どもの住まいについてなら、役所や計画相談事業者、あるいはグループホームの運営会社など。成年後見制度であれば社会福祉協議会などが設置している成年後見センターや後見人を受任している専門職。また、相続や信託などであれば、それぞれを得意にしている専門職。いずれも、対応してくれそうな相手を親が課題ごとに自力で探すことになります。
 ただ、そもそもそれ以前の、親の悩みが漠然としている段階では、どこに行って相談していいかすらわかりません。これでは、モヤモヤとした悩みや不安がどんどん大きくなってしまいます。
 そこで「親なきあと」相談室という、とりあえず最初に行ける相談窓口を作ろうと考えました。
 まずはここで話を伺い、早い段階からモヤモヤした不安について相談をするなかで、具体的な課題が明らかになり、実際に対応をしてもらえる相談機関や利用できる制度や仕組みにつないでいきます。「親なきあと」相談室が果たすのは、あくまでこの“つなぎ”の役割。病気の場面にたとえれば、重病になってから駆け込む大病院ではなく、ちょっと体調が悪いうちに行くかかりつけの医者、そんなイメージを持っています。
 全国には私を含めて現在 100 を超える相談室があり、それぞれ独自に活動をしています。相談の中には、家族信託の活用が有効なケースも相当数あります。私のホームページに相談室のリストを掲載していますので、もし「親なきあと」に取り組まれたいという方がいらっしゃいましたら、ぜひこの相談室と連携して、障害者と家族の課題解決にお力を貸していただければと思います。

一番大切なのは地域のつながり

 「親なきあと」について、親たちの希望は「本人が地域で安心して生活し続けること」に尽きると思います。この希望を実現するために、これらの制度やサービスを知り、地域のつながりを持つことが重要です。相談室は、これらのアドバイス、お手伝いをするために活動しています。
 相談室を運営しているのは、信託や相続などを専門にする方や、障害福祉の専門の方もいて、地域の専門機関と連携しながら相談対応をしています。次回からは、実際に相談室を運営している方にコラム執筆をお願いして、具体的な活動内容を紹介していただく予定です。